Feature Article in《Image Laboratory》Magazine — The Role and Quality Importance of High-Speed Cables in Machine Vision Systems

日本の専門誌『画像ラボ』掲載特集 — 高速伝送ケーブルのマシンビジョンシステムにおける役割と品質の重要性

著者紹介:COMOSSグループ 最高技術責任者(CTO) 王俊凱​​​​

工業オートメーションやスマート製造、AI技術の発展に伴い、マシンビジョンシステムは半導体検査や精密組立、欠陥検査、病理診断、自動運転など、多岐にわたる分野で広く活用されています。これらのシステムは、高精度な画像を高速に取得・解析する能力が最も重要とされています。マシンビジョンシステム(図1)は、大きく二つの重要なサブシステムと一つの接続部品に分類できます。すなわち、画像取得システム、画像処理システム、そしてこれらを繋ぐ接続ケーブルです。


(図1)マシンビジョンシステム


マシンビジョンの分野において、ケーブルは単なる接続媒体ではなく、データ伝送の重要なチャネルです。ケーブルは画像信号の完全性、伝送速度、およびシステムの安定性に直接影響を及ぼします。本稿では、ケーブルの高周波特性に影響を与える要因を探り、いくつかの設計指針を提示します。デジタル通信システムにおける信号判定の容易さは、信号対雑音比(Signal-to-Noise Ratio, SNR)によって測定できます。信号エネルギーがノイズを大きく上回る場合(SNR ≫ 60 dB)、信号判定の正確率はほぼ100%に達します。逆に、ノイズエネルギーが大きくなるほど、信号判定の正確率は低下します。


信号エネルギーの大きさは、送信源が発生する信号のパワーと伝送チャネルで生じる損失によって決まります。チャネル損失の主な要因はケーブル損失であり、これはリターンロス(Return Loss, RL)とインサーションロス(Insertion Loss, IL)の二つに大別されます。リターンロスとは、伝送チャネルやインターフェースのインピーダンスが不一致な場合に、源側へ反射して戻るエネルギー量を示します。ケーブルやコネクタ、PCB配線などのインピーダンスが(50Ω、75Ω、100Ωなど)一致していないと、信号エネルギーの一部が反射し、反射波が元の波と重畳して元信号を歪ませます。さらに、反射信号は時間差で重畳するため、波形にジッタや遅延が生じ、信号完全性が劣化してアイパターンが閉じる(図2)要因となります。RL(dB) = -20 log10(|Γ|) where Γ is Reflection CoefficientΓ = (ZL – Z0) / (ZL + Z0), where ZL is the load impedance and Z0 is the system's characteristic impedance.ZLとZ0の差が大きいほど、反射係数が大きくなりリターンロスが増大します。逆に差が小さい、またはZLとZ0のインピーダンスが一致している場合に、反射係数が最小となり、リターンロスも最小化されます。

 (図2) インピーダンス整合時のアイパターン インピーダンス不整合時のアイパターン


リターンロスを低減する主な手段は、特性インピーダンスを制御・整合させることです。図3はあるケーブルのインピーダンス分布を示したものです。高速伝送コネクタおよびケーブルのメーカーは製造品質と安定性を絶えず向上させ、インピーダンス変動を緩やかに抑えています。シールドツイストペアケーブルの幾何構造、すなわち導体間隔、撚りピッチ、等価誘電率、シールド層などがケーブルの特性インピーダンスを決定します。

(図3)インピーダンス分布曲線図


ラストワンマイル、すなわちケーブルアセンブリメーカーの工程では、ストリップと整線、はんだ付け(図3のCable Managementの部分)がケーブルの幾何構造を乱し、図4のようにシールド層を剥ぎ取ることでインピーダンスを大きく変動させます。従来の加工は人手と簡易工具に頼るため、公差管理が不十分でインピーダンス変動が激しくなりがちです。COMOSSは長年の経験を基に自働化と人機協調の作業モデル、さらに精密治具を組み合わせることで、図4に示したシールド層の剥離長さdを最小化し、公差を安定した範囲に抑えています。寸法管理に加え、加工部を高誘電率(Dielectric Constant)の材料で被覆することで、図5のような高インピーダンス曲線を低減させます。これによりインピーダンスを一定範囲に維持し、リターンロスを軽減しています。


(図4)シールド層剥離長さ




(図5)インピーダンス曲線 v.s 誘電率(Dk)の異なる材料


インサーションロスは、導体抵抗、誘電体損失、放射損失、ディスコン(不連続構造)などに起因して信号エネルギーが減衰する現象であり、その大部分はケーブルによって決定されます。導体抵抗による損失について、高周波領域では電流が導体表面に集中する表皮効果(Skin Effect)が支配的になるため、導体表面の導電性と表面粗さが損失量を大きく左右します。このため、導体のメッキ材質とメッキプロセスが極めて重要です。現在は導体減衰を低減するために銀メッキ銅線が広く用いられています。導体の撚り線構成(図6)も損失に影響します。同じAWG(線径)でも、素線本数が多いほど導体の柔軟性(Flexibility)は向上しますが、高周波信号の損失も増加します。したがって、導体の柔軟性と信号損失はトレードオフの関係にあり、用途に応じた最適設計が求められます。
(図6)素線本数と柔軟性(Flexibility)の関係


誘電体損失については解決策は比較的単純で、低損失かつ低誘電正接(Df)の絶縁材料を選定することが基本となります。ケーブル応用では、干渉はノイズ源として機能し、信号完全性を低下させる主因の一つです。特に高速伝送や生産環境、マシンビジョンシステムではその影響が顕著になります。代表的な干渉源は以下のとおりです。外部機器、例えばモーター、インバーター、電源モジュール、その他の高周波機からの電磁干渉(EMI)、または雷サージや静電気放電(ESD)など、外部環境からのパルス干渉があります。高速伝送ケーブルの構造において、差動信号対にシールドツイストペア(Shielded Twisted Pair, STP)を採用するだけでなく、ケーブル全体にもシールドを施し、外部機器や環境からの干渉を遮断する必要があります。シールド構造には、下記の組み合わせが一般的です。アルミ箔シールドと銅線シールドがあって、銅線シールドには柔軟性の高いスパイラル(Spiral)タイプと構造が密で緩みにくいブレイド(Braid)タイプがあります。(図7)。アルミ箔シールドと銅線シールドを併用することで、広帯域にわたる干渉抑制を実現し、信号品質を確保します。



(図7)シールド構造


ケーブル内部でよく見られるノイズ源の一つがクロストークです。ケーブル内では複数の信号が同時に伝送され、多数の導体が互いに近接しているため、異なる電磁界が相互に干渉・結合します。差動信号対のシールドもケーブル全体のシールドと同様で、アルミ箔シールドに加えてメタルブレイドシールドを追加することで、異なる信号対間のクロストークを大幅に低減できます。ケーブルのシールド構造はノイズ対策の第一段階であり、次に重要なのが組立時の接地(アース)とシールドの完全性です。シールドはノイズをシールド層に閉じ込め、信号に結合して信号完全性を損なわないようにする役割を果たします。接地はノイズエネルギーを逃がす経路を提供し、ノイズを排除します。シールドの接地が不十分、あるいは接地されていない(いわゆるシールドフローティング)の場合、ノイズエネルギーは放射として漏洩し、自身の信号や他の機器に悪影響を及ぼす可能性があります。さらにシールドの完全性(図8)も重要です。周波数が高い信号ほど、わずかな隙間からでも放射されやすくなります。一般に隙間は波長の 1/10 以下でなければ信号放射を防げません。そのため、ケーブル加工時に隙間のない完全なシールドを確保することが、ノイズ耐性を高めるうえで極めて重要です。


(図8)シールド完全性


信号エネルギーの損失や内部・外部からの干渉に加えて、信号間の伝搬遅延の不一致(スキュー、Skew)も信号完全性を損なう代表的な要因です。スキューとは、同一差動ペア内での遅延差(Intra-Pair Skew)や、異なるペア間の遅延差(Inter-Pair Skew)を指します。例えば差動ペア信号(Differential Pair)において正側(D+)と負側(D–)の伝送時間が同期していない場合、受信端でノイズを完全に打ち消せず、ビットエラーが発生します。スキューの主な原因は導体長の不一致です。例えばツイストペアの撚りピッチが異なる、または撚り合わせ時に2本の線に掛かる張力が異なるなど、製造工程でペア内の線長差が生じます。そのため、より高速なデータ伝送(信号完全性への要求が高い用途)において、ケーブルの構造をツイストペアから同軸(Coaxial)あるいはツインアクス(Twinax)に変更するのが一般的です。


(図9)高速伝送ケーブルの構造


結論
今日のマシンビジョン用カメラはもはや低画質・低速データ伝送の装置ではありません。解像度とフレームレートの向上に伴い、データ量は指数関数的に増大しています。この膨大なデータを極めて短時間で処理ユニットへ伝送するには高速伝送ケーブルが不可欠です。ケーブルが高速伝送に対応していなければ、映像の遅延やフレーム落ち、さらにはデータエラーを招き、検査精度や生産効率を低下させてしまいます。これこそが高速伝送ケーブルの品質が重要な理由です。本稿では高周波領域でケーブルの性能に影響を与える主な要因とその対策を解説しました。読者の皆様の今後の応用に役立てば幸いです。

参考文献:VESA DisplayPort (DP) Standard Version 1.4


この記事は日本の雑誌《画像ラボ》11月号に掲載されました。












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